コールセンター最前線

  Vol.14:「現場発信型」の業務改善が高品質とコスト削減を実現する 離職率1%以下、勤続10年90%のコールセンター

「離職率の低さ」が「応対品質の高さ」に直結するコールセンター業界。
前回のコラムでは、千葉センターをピックアップし、離職率を抑えるためのマネジメントの秘訣をお伝えいたしました。

今回は、同じく低離職率を誇るサテライト浦和をご紹介します。
離職率1%以下、勤続10年のコミュニケーターが90%というこのセンターは、「現場発信型」の業務改善を行うことで高品質とコスト削減を実現しています。

その実績が高く評価され、「The Contact Center World Awards 2012 APAC大会」では、最優秀賞である金賞を受賞しました。

今回は、受賞したサテライト浦和の番号案内センターのスーパーバイザー(以下SV)にインタビューを行い、「現場発信型の業務改善」について聞きました。

出席者:サテライト浦和/SV 福嶋智子、SV 堀米文


離職率1%以下、勤続10年90% 応対品質の高さを支える環境作り


-サテライト浦和は離職率がとても低いそうですね。

福嶋SV
今、サテライト浦和では勤続10年のコミュニケーターが90%、離職率1%以下です。これは応対品質を維持するための大きなポイントだと思います。ベテランのコミュニケーターは経験もスキルも持っているので、この人たちが長く働くことのできる環境作りはとても大事ですね。

-具体的には、どのような環境を心がけていますか。

堀込SV
たとえば、コミュニケーターがお客様と応対中はSVが背後に立ち、何かあればフォローできるようにして、安心感を与えるようにしています。 また、育児中や介護中でも働けるよう、36パターンの勤務体系を設けています。特に女性はライフスタイルが変わりやすいので。優れた人材を育成すること、その人たちが長く働くことができるようにすることは、コールセンターのマネジメントで非常に重要なポイントだと思います。

福嶋SV
あとは、「提案箱」を設置して、コミュニケーターの意見や提案を汲みあげるようにしています。それらのすべてを、SVが目を通し、掲示します。
SVへの意見があれば真剣に改善に取り組みますし、業務に関する提案もたくさん寄せられるので、ひとつひとつ検討します。

-そういう意見を言いやすい体制も、モチベーションアップにつながるのでしょうね。

堀込SV
つながりますね。実際に使われるようになったアイデアもたくさんあります。たとえば、電話応対の際に使用するヘッドマイクに、うがい用の小さな紙コップをセットするという案。

福嶋SV
ユニークでしょう?(笑)

堀込SV
こうすることで、声が紙コップの中に集まり、特に年配のお客様には聞き取ってもらいやすくなるのです。こういう実際の業務上で役立つ斬新なアイデアは、マネジメント側ではちょっと思いつきません。
着目すべきは、一人ひとりが問題意識を持ち、業務への意欲が高いからこそ、こういうアイデアを思いつくのだという点です。そして、これを活かす仕組みがあるからまた新しい改善提案が生まれるのです。これは本当に嬉しいことですし、重要なことです。


スキルの向上は、コスト削減につながる


-今回の発表では、先ほどのようなアイデアも含め、現場発信型の業務改善によってスキルをさらに向上させたことで、年間およそ4,100万円のコスト削減につながったとあり、高く評価を受けていました。応対品質の向上とコスト削減は、どのように関係するのでしょうか。

福嶋SV
私たちが行っている電話番号案内業務は、住所や名前・職業からお客様が知りたい電話番号をご案内するサービスです。日本では104番ですね。コミュニケーターのスキルが高ければ、1回ごとの手数時間を短縮することができます。時間を短くすることができれば、その分多くのコールを受けられる、ということから、全体的なコスト削減につながるのです。

もちろん、単に「応対時間を短くする」ということを目標としているわけではありません
。 年配のお客様など時間をかけてお問い合わせ先を聞き出す必要がある場合には、時間をかけます。その場合は、応対時間を短くしようという気持ちはありません。よく問い合わせがありすぐに案内ができるものには時間をかけずに案内し、平均手数時間を短くするという考え方です。そのためのスキル向上ですね。


現場の声を活かし、独自のトレーニングツールを考案


-スキル向上のために、独自のトレーニングツールを考案したそうですね。

福嶋SV
「新タイピングトレーナー」のことですね。これは、流れる音声を復唱しながら同時にタイピングができる能力を鍛えることを目的として作りました。

104番の業務は、お客様と会話しながら同時にタイピングをしなければなりません。
つまり、電話を受けながら「聞く」「話す」「タイピング」という3つの動作を同時に行っているのです。しかし、応対中は手が止まり、タイピング中は無言になってしまうコミュニケーターもいました。この点を改善するために作ったのが新タイピングトレーナーです。

この新タイピングトレーナーは「聞く」「話す」「タイピング」を同時にトレーニングすることができます。

堀込SV
従来のタイピングトレーナーは、「ひたすらタイピングの練習をする」というもので、「話す」訓練が抜けていました。それを、タイピングしながら「話す」訓練もできるように作り変えてしまったのです。最初は、今与えられているものを作り変えてしまっていいのかな?というところから始まりましたが、本部の協力を得ながら進めました。

-そういう声を上げると、本部は対応してくれるのですか。

堀込SV
はい。作り変えていいのだとわかって、実際に自分たちで作り変えることができたのは本部の協力があったからです。非常にモチベーションアップにもつながりました。

-コミュニケーターの方たちの反応はいかがでしたか。

福嶋SV
コミュニケーターたちがまた、新しいおもちゃを与えられた子どものように喜んでくれて(笑)。「楽しい!」「私のために作ってくれたみたい」「実際にお客様と応対しているみたい」と言いながらトレーニングしてくれました。現場の声と組織の力が一体となることで、品質向上にまた一歩近づけたと思います。

堀込SV
新タイピングトレーナーを作ったことをきっかけに、この他にも色々なユニークなツールをどんどん作っていきました。
そのうちのひとつが、「女優の台本」。これは、基本スクリプトを集めた小冊子なのですが、それをただ読むのではなく、「女優の台本」という名のトレーニングツールにしたのです。また、オペレーションルームの入り口に、「女優鏡」というのも設置しました。「ここからは、あなたはプロの女優です」という意識づけですね。

福嶋SV
これはどんなに辛いことがあっても、プロなのだから相応の応対をしなくてはいけない、そこは女優になりきってやってくださいという考え方ですね。

堀込SV
トレーニングって、やはり苦しいものだと続きませんよね。楽しいものだと続きますから、楽しみながらやってもらおうということを考えました。

福嶋SV
だから、実際に使ってくれているコミュニケーターにも感謝ですよね。本当に喜んでやってくれました。

堀込SV
しかも、見事に成果が出ましたから。本当に感謝です。


常にアンテナを立てて業務に備える ─コミュニケーターの資質


-これまでチームを率いてきた経験上、コミュニケーターはこんなタイプの人が多いといった特徴があれば教えてください。

福嶋SV
勤務時間外にタイピングトレーニングをしたり、意欲的な人が多いですね。番号案内の仕事は、常に社会の情勢を映し出しています。長年の経験から、「この時期にはどこのお問い合わせが多く、どこを案内すればいいだろう」と考えて、事前に色々と調べてくるコミュニケーターがたくさんいます。こういうプロ意識がひとつでも多くの番号案内に結びついているのだと思います。

堀込SV
だから、常にアンテナを立てている人が向いているかもしれませんね。たとえば夏の花火大会なら、今日は熊谷市、来週はさいたま市と、そういったイベントや番号案内に影響力のある情報を、いち早く察知しているような人ですね。

-事前の心がけと準備があってこそ、素早い対応につながるということですね。

福嶋SV
このセンターのメンバーは、平均年齢が51歳で高いほうだと思います。最高年齢は68歳ですから。実際、海外の発表会場でも、この話をすると歓声が上がりました。「なんてセンターなんだ!」と思われたのでしょうね。会場では「本当に、その年齢層で成り立つの?」という質問もされて、「成り立っています。成り立っているからこそ、この結果が出ています」という説明をしました。豊富な経験と高いスキルがあればこそできるサービスがあるのです。私たちのような平均年齢の高いコミュニケーターで成り立っているコールセンターがもっとあっていいし、この人たちだからこそできる仕事が、絶対にあると思います。

-最後に、今後の目標や理想としているSV像などがあれば、教えてください。

堀込SV
私が常日頃、心がけているのは、コミュニケーターさんとの信頼関係を築くこと。信頼されるように日々、がんばっているつもりです。コミュニケーターさんは本当に困って、私たちSVを呼ぶのです。それに100%応えてあげられるようにするのが自分の一番の仕事であり、そのようなSVでありたいと思っています。

福嶋SV
私はコミュニケーターを12年経験して、5年前からSVをやっていますので、コミュニケーター歴はとても長いです。その長い経験があるからこそ、コミュニケーターの気持ちがわかる。ですから、その部分を活かしたSVを目指しています。

-気持ちの拠り所としてのSVがいてくれることで、センターで活きる改善提案がコミュニケーター発信でどんどん生まれてくるのですね。本日はありがとうございました。The Contact Center World Awards 2012世界大会でも、がんばってください。


サテライト浦和のチームは、2012年10月29日からアメリカ・ラスベガスにて開催されておりますThe Contact Center World Awards 2012世界大会決勝へ、アジア・パシフィック地区代表として参戦します。


※組織名・所属部署など本ページの掲載内容は取材時(2012年10月)の情報です。