今回は特集として、一時帰国した当社エグゼクティブ・アドバイザー妙中俊哉へのインタビューをお送りいたします。
米国におけるコールセンター事業での豊富な経験に基づき、今回特に日米のコールセンターに見られる違いを語ってもらいました。
聞き手は、本誌編集スタッフと、国際事業を担当する生沢雄一です。

◆「コールセンターは企業の生命線」-戦略的活用が進むアメリカ


-企業がコールセンターを構築する目的や活用方法について、日米でどんな違いがあると感じていらっしゃいますか。

妙中:
企業のトップがコールセンターに対して持っている認識や、戦略上の位置づけですね。
アメリカでは、コールセンターは、Communication(顧客とのコミュニケーション)、Profit(利益追求)、Risk(リスク管理)という3つの要素を含んでいると考えられています。
これらの単語の頭文字をとると、「CPR」。「CPR」は心肺蘇生法=Cardio Pulmonary Resuscitationという意味を持つことになぞらえ、「コールセンターは企業の生命線」と言われています。
この言葉が表す通り、アメリカの企業は、「コールセンターは戦略的に重要な機能である」という強い認識を持っています。
一般的な大企業の新入社員は、3カ月ほど自社の持つコールセンターの現場で研修を受けます。そこで「コールセンターあってこその企業」ということを徹底的に教育されるのです。 日本ではまだ、「顧客に対応するための集約型の受付」というコンセプトしかない企業が多いように感じます。


生沢:
リーマンショック後に企業の業績が落ち込んだとき、日本ではコールセンターの費用を下げました。
しかしアメリカでは、これをきっかけに顧客に逃げられたら大変と考え、手厚く対応するためコールセンターに費用をかける企業が多かったと聞きます。
私も、戦略的なコールセンターの活用という点では、やはりアメリカは日本より進んでいるのかなと思います。


-コールセンター自体の品質はどうでしょうか。

妙中:
技術面や人材の質という面では、むしろ日本のコールセンターのほうが進んでいると思います。


生沢:
そうですね。私もアメリカに行くとよく聞かれるのが、日本ではオペレーターやスーパーバイザー達のモチベーションをどう管理しているのかということです。
向こうでは、マネジメントの仕組みの中にモチベーションの維持の方法を組み込んでおかないと、仕事の質がどんどん低下しかねないという問題があるようです。
文化的な基盤もあるかと思いますが、日本の場合は、特に意識しなくてもみんな一生懸命働いてくれます。もちろん教育や評価に力を入れていますが、それは、日米とも同じでしょう。もともとのオペレーターの意識が、日本の場合、非常に高いと思います。



◆専門分野に特化し、高付加価値を目指す


-アメリカのコールセンター運営会社の戦略や特徴を教えてください。

妙中:
アメリカで特徴的なのは、BtoBの製造業専門や、医療機関専門など、専門分野に特化した展開をしているコールセンター運営会社が多いことです。
専門性の高い対応ができるオペレーターとすぐに電話がつながるのは、顧客にとって非常に心強いですよね。
また、クレーム処理の専門部署を持つ会社もあります。
日本と大きく異なるのは、運営会社やオペレーターの力量に合わせて、ある程度の決定権を与えていること。
返金を求める顧客に対して、日本なら一度電話を切って上長に確認をとって再度連絡して……という手順が求められるところを、「500ドルまでの返金なら自分で判断してOK」というように決定権を与えておくことで、1回のコールでのクレーム解決につなげます。
ちなみに、ある会社のクレーム処理専門部署では、オペレーターの平均年齢がなんと82歳だとか!
高齢のオペレーターには高いコミュニケーション能力を持つ人が多いため、その会社では、意図的にシニア世代を多く雇用しているそうです。
クレームの電話をかけてくる顧客も、電話に出るのがシニアだと、あまりきつい言葉をぶつけるわけにもいかず、トーンダウンする……という効果もあるそうですよ。
大手の会社は、日本と同様に、総合力を強みに何でもやるというスタンスなので、際立った特色はありませんが、大手以外では専門性を特色にしている会社が多いですね。


生沢:
そういった専門的な会社は、料金は高いですが、非常に競争力があると聞きます。
NTTソルコの場合、現在強みを持っているのは通信や金融、自治体などです。今後はシニアマーケットなどにも力を入れて、さらに専門性を増したサービスで他社と差別化を図ることも課題の一つだと思います。



◆進む顧客セグメント-利益追求のため、効率的にコールセンターを利用


-コールセンターの戦略的な活用ということで、具体的な取り組みの例を教えてください。

妙中:
今、アメリカのコールセンターが目指す方向性の一つが、「顧客の差別化」です。「売上の80%は20%のお客様によって生み出される」というパレートの法則は有名ですが、これをさらに推し進めて、5%のお客様から95%の売上を生み出そうというくらいの勢いで、企業は顧客をセグメントし始めています。
そのセグメント戦略の一端を担うのがコールセンターの活用です。
たとえば利用料金に応じて、最優良顧客には、すぐにオペレーターにつながる専用の電話番号を、それに準じる優良顧客には、自動応答で振り分けて対応する電話番号を、そしてその他のお客様には、つながるまで待たなければならないような電話番号を案内するといった具合に、コールセンターで顧客を差別化するのです。


-日本では、現状からはちょっと考えにくい対応ですね。

生沢:
アウトバウンドは、属性に応じて対応を変えるのは普通ですが、インバウンドでは、証券など一部の業界ではあるかもしれませんが、まだ導入企業はそれほど多くないかと思います。


妙中:
膨大な顧客がいるような業界では実際、全員には対応しきれませんし、対応できる量を超えてしまうと、結果的に大事なお客様に迷惑をかけることになりかねません。
費用対効果の観点から優先度の低い顧客については、むしろ店頭に誘導する形になってきています。
一見、逆行するようですが、今、ウォークインカウンターと呼ばれる対面型の窓口が、また増えています。店頭に足を運ぶことで、対面で詳しい話を聞けるし、新商品の情報なども得られるので、顧客にとってもメリットがあります。たとえば通信や電気、水道など、膨大な数の顧客がいるようなサービスや、証券など富裕層マーケティングを必要とするような業態では、そういったセグメントが当たり前になっています。
これは、企業が利益を追求するなかで、優先度の高い顧客に注力するために、コールセンターを戦略的に活用するという代表的な例でしょう。
このように、アメリカの状況を見ると、企業にとってコールセンターは非常に多くの可能性を秘めた機能であるということがわかります。
日本でも今後、このような動きが広がっていくと思いますね。


-今後が楽しみです。ありがとうございました。



※組織名・所属部署など本ページの掲載内容は取材時(2012年7月)の情報です。