コールセンター最前線

  Vol.25:【特集】業務改善の事例演習 〜月末と月初に増加する着信の応答率を改善せよ!〜

前回のコラムに引き続き、業務改善の事例についてご紹介します。
今回は「ケーススタディ」として、実際に起こった業務上の課題に対して、当社の専門スタッフはどのような視点で業務改善の取り組みを行ったのか、担当者の声をご紹介します。

出席者:池袋センター スーパーバイザーチーフ 鮎川宏
    池袋センター スーパーバイザー 石毛潤

 

業務概要と課題


— 本業務の概要と課題を教えてください。

鮎川:
通信サービスのカスタマーサポートを行っており、主に以下のようなコールを取り扱っています。

 ・サービス内容に関するお問い合わせ
 ・料金に関するお問い合わせ
 ・契約情報変更の受付
 ・機器の接続や操作方法に関するお問い合わせ

ここ数年は運営指標である「応答率」が低迷傾向にあり、慢性的な課題として問題視されておりました。

石毛:
応答率が低迷する背景としては、サービスのご利用者数が急増し、それに付随してカスタマーサポートへの呼数も増加したことがあります。特に月末と月初はコールが集中しやすく、応答率が低下していました。電話の「つながりにくさ」は、お客様の満足度に影響することはもちろんですし、つながらないことに不満を抱えたお客様からのコールは、積み重なると担当オペレーターの負担にもなります。

鮎川:
こうした背景に加え、引越しシーズンとなる年度末にはお客様からのコールがさらに増大することが見込まれていたため、クライアント様からは、早急な受付体制の拡充による応答率の改善をご要望いただきました。

 

当社が実施した業務改善策


◆現状分析によって解決の糸口を探る

— どのような考え方で業務改善に取り組んだのか、教えてください。

石毛:
より具体的な課題と可能性を抽出するため、現状分析から着手しました。まずコールが増加しやすい月末と月初の「お問い合わせ内容」を洗い出し、いくつかのパターンに分類しました。その上で、それぞれのパターンに応じた「応対フロー」、「オペレーターの必要スキル」について、洗い出しと分析を行いました。

分析を行った結果、さまざまなお問い合わせの中でも「契約情報の変更(以下、契約変更)」に関するお問い合わせは月末と月初に集中しやすい傾向があり、また、「契約変更」の応対フローは前半部分と後半部分でオペレーターに求められるスキルが異なることがわかりました。

鮎川:
契約変更のお問い合わせをいただいた場合には、まずは運用ルールに基づいてご本人様確認を行い、その後、複数の顧客システムを用いてお客様の契約内容やご利用状況を読み取ります。また、読み取った情報に基づいてお客様に何をご案内しなければならないのかを判断するスキルが必要となるなど、案内方法が確定するまでは、より柔軟な対応が求められます。

一方で、案内方法が確定した後は、所定の流れにそったトークとなりますので、比較的容易であることが改めてわかりました。このため契約変更のお問い合わせへの応対を見直すことで、応対率の改善ができるのではないかと考えました。

◆コールの前半と後半で、受付配置を分類する方式

— 現状分析の結果を踏まえて、どのような対応を行ったのでしょうか。

鮎川:
「応答数」を増やすために、契約変更のお問い合わせに特化した受付を行える臨時センターを構築することとしました。

ただし、通常はオペレーターの研修期間に2ヶ月間を要するため、従来の方法で臨時センターを構築することは月末月初の繁閑差吸収という目的に対し、スピード感やコストが見合わなくなってしまいます。
臨時センターでは、現状分析の結果に基づき、契約変更のお問い合わせを前半と後半に分け、オペレーターからの説明が中心で初歩的なスキルで応対可能な後半部分を臨時センターに転送することで、より多くのお問い合わせに対応できるようになると考えました。

業務に精通する既存のオペレーターが、お客様からの問い合わせを受け、契約変更以外のコールは「自己完結」、契約変更のコールは前半の案件特定までを実施し、コールを「転送」します。コールの後半からは短期育成により増員されたオペレーターが「転送」を受け、クロージングまでを担当します。既存オペレーターによる「自己完結」と、短期育成オペレーターによる「転送受」の2つのチームを組み合わせることで、品質を保ちながら応答数を増加させます。

臨時センター転送フロー

石毛:
オペレーターの増員を行う場合は、通常の研修では前述のとおり着台までかなりの時間がかかります。しかし今回は「転送方式」を一部に導入したことによって、業務範囲が限定されますので、増員された人材が3日間で着台できるように研修内容を見直しました。

また、お客様の利便性に配慮すると途中でオペレーターが代わるよりも一人のオペレーターが最後まで案内する方が好ましいため、短期育成オペレーターの中でもスキルが高いオペレーターは、コールの前半から受付をする「自己完結方式」のチームに配置するように運用を見直しました。さらに、臨時センターの育成スキームは従来のオペレーター育成のありかたの見直しにもつながりました。2ヶ月間を費やし、座学とOJTを経て初めて着台する従来育成方式と比べ、座学期間を短くしても比較的容易なお客様応対を行い実践経験を積んで次のステップに進む方がオペレーターの成長スピードが速くなることがわかったため、臨時センターを人材育成のスキームとして取り入れました。

運用変更による効果

◆事務手続き処理上のミスを防止する

— その他、増員にともなってどのような取り組みを行っているのでしょうか。

石毛:
臨時センターのオペレーターは、コールを受け付けた後にシステム上で契約情報の変更などの処理も行います。経験が不足している分、処理ミスを起こしてしまうリスクが想定されたので、処理上でミスが発生しやすい項目はあらかじめリストアップし、臨時センターで受け付けた応対記録と処理内容を簡易に照合出来る仕組みを作りました。事前にチェック体制を設けたため、ミス発生も2件のみで、その2件も処理確定前にチェックして修正出来たため、お客様に影響を及ぼすようなミスは発生していません。増員を行う際には、品質を維持する仕組みを同時に検討していくことが重要だと考えております。

 

成果と取り組みのポイント


— 今回の取り組みの成果について教えてください。

鮎川:
臨時センターを導入する前と比較して、月末の応答呼数が50%増という劇的な成果が得られました。また、電話がつながらないことにより、同じお客様が複数回かけるようなケースも減り、ユニークユーザー数で見ると30%減となりました。これが応答率の大幅な改善を後押ししています。

これらの定量的な成果のみならず、研修方式の見直しによる運営そのものの実効性の向上、スーパーバイザーの管理稼働の削減、既存オペレーターの負荷軽減など、運営指標に留まらないさまざまな成果が得られたという実感があります。

— 今回の取り組みのポイントについて教えてください。

鮎川:
マネージャーを中心としたトップダウンでの方針策定と、現場に精通したスーパーバイザーによるボトムアップでの業務設計・試行錯誤のなかでの運営のブラッシュアップがあわさり、スピード感と柔軟性を持って実施できたことが成果につながったと感じております。

石毛:
現状分析をしっかりと行い、分析結果に基づいて新たな「仕組み」を構築できたことがポイントだと思います。取り組み後に既存オペレーターに行ったアンケートでは「月末と月初の応対への負担が軽減されて良かった」との回答が8割以上を占めており、「顧客満足度の向上」と「従業員満足度の向上」という2つのテーマは密接な関係にあると改めて実感しました。


当社はコールセンターの構築や業務改善に関わるさまざまなご相談を受け付けております。お気軽にお声がけください。


※組織名・所属部署など本ページの掲載内容は取材時(2013年09月)の情報です。